1. 外国人から見た近世日本の姿
近世日本を訪れた外国人は、紀行文に日本人の様子を書き記しています。
イギリス領時代のカナダ出身の冒険家、ラナルド・マクドナルドは「日本回想記」の中で、「日本人のすべての人-最上層から最下層まであらゆる階級の男、女、子供-は、紙と筆と墨を携帯しているか、肌身離さずもっている。すべての人が読み書きの教育をうけている。また、下級階級の人びとさえも書く習慣があり、手紙による意思伝達は、わが国におけるよりも広く行われている。」と述べています。
また、イタリア人宣教師、アレシャンドゥロ・ヴァリニャーノは、「日本巡察記」で「人々はいずれも色白く、きわめて礼儀正しい。一般庶民や労働者でもその社会では驚歎すべき礼節をもって上品に育てられ、あたかも宮廷の使用人のように見受けられる。この点においては、東洋の他の諸民族のみならず、我等ヨーロッパ人よりも優れている。」と記録しています。
これらの記述からは、当時の日本人が、他の諸外国と比較して、身分や性別を越えて高い読み書き能力を持ち、礼儀正しさを身につけていた様子が分かります。
こうした教育の伝統が継承され、明治維新後の日本の近代化が進められたことをロナルド・ドーアなどの欧米の研究者は、「近世日本の教育こそが日本近代化の知的準備をした。」として高く評価しています。
このようなエピソードからも分かるように、近世の日本では高い教育を受けた層が社会全体に広がっていました。外国人にとっては、一見しただけで相手の身分を判断することは困難なほどでした。